日本法人の新社長として米国本国から赴任したX氏は、片言の日本語で自らマネジメントに乗り出すが……「日本人FIドライバーがなかなか勝てないのは言葉の問題によるところが大きい」という話を聞いたことがある。外国人エンジニアに対して、マシンに関する自分の感覚をうまく伝えるだけのボキャブラリーがないと、マシンが自分仕様に仕上がらないそうなのである。日本人の海外アレルギーは昔ほどではないのだろうが、言葉の壁は、まだそこかしこにあるような気がする。
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従業員数五十名の外資系食品商社A社は、半年ほど前に米国本社から新社長を迎えた。日本法人の業績拡大とテコ入れを目論んだトップ人事である。新社長のX氏は若い頃、短期間ではあるが日本で暮らしたことがあるという。そんな背景もあってか、X氏はあふれる情熱を胸に秘め、日本法人の新社長に就任したのだった。X氏がA社のテコ入れのために打った布石の一つが、人事戦略である。営業力を強化するために、新たに人材採用をはじめたのだ。そして、入社した新人は、X氏自ら率いる営業部隊の直属とし、X氏のスタイルで教育しようとした。これまでのA社のやり方をすべて否定するつもりはなかったようだが、古手の社員の意識変革をするよりも、まだ既成概念にとらわれていない新しい人たちを自分流で鍛え上げていく方が営業力強化には近道、と思ったらしい。そうして鍛え上げた人たちが営業現場で活躍すれば、A社の営業全体にプラスの波及効果を促すだろう、というのがX氏のシナリオだった。そのためにも、新しく入社してきた人たちには、つたない日本語を通して自らマネジメントを買って出たのである。